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WELLSAID / REGRETOPIA (LP)
¥3,680
香港のオルタナティブロックバンドが2024年にメンバーのレーベルであるUN TOMORROW、AIRHEAD RECORDSよりリリースした3rdアルバム。ザラザラとした質感から生まれるどことない不安定さ、その中で表現される楽曲はキャッチーでありながらも漠然とした寂寥感に溢れたサウンド。作品毎に音楽性を変化させてきていましたが、今作では元々あったトゥインクルエモの要素はなくなり、ポストハードコアやオルタナティヴロックの源流からの影響が色濃くなっています。シンプルになりつつより幅が広がっている印象で、枯れた質感はKarateやSlint、オルタティヴでポップなアプローチはBuilt to spillなどといったバンドが思い浮かびました。A面3曲目"The Abattoir"は個人的に特に気に入っていてレボリューションサマー彷彿のリフとボーカルを主軸にしつつギターソロがあったり最後の激情チックな締め方までが上手くまとまっていて、面白くてしっかりカッコ良い。この作品内にある多様な要素が凝縮された一曲かなと思います。ラストの"Ein"のキャッチーなコーラスのままのフェードアウトはエモもポストハードコアも突き抜けていく感じが気持ち良く爽快。90'sから現在までにある雑多性をオルタナティヴなロックとして昇華している作品になっています。 https://sweatyandcramped.bandcamp.com/album/regretopia
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JOSHUA / NASCENT (LP)
¥4,300
SOLD OUT
ニューヨークのエモバンドの1996年にImmigrant Sun RecordsからCDでリリースされたデビューEPが、活動再開に際してリマスターされ初めてレコード化。本作「Nascent」は、1995年のデモ「Today We Flew Our Balloons」からの未発表曲と、1999年にDoghouse Recordsからリリースされたデビュー・アルバム「A Whole New Theory」からの2曲を再レコーディングした内容となっています。DLコード付き。メランコリックで繊細なメロディとハードコアからの影響を感じさせるダイナミックな展開とリフが結びついている90's Emo。徐々にインディ色が強くなっていった印象だったのですが、今作収録曲は時代的なものなのかかなりニュースクールハードコアの要素を感じるサウンドで、ヘヴィでネチネチした質感はShiftやBy a Threadなどといったバンドが思い浮かびます。伸びやかなボーカルは蒼さとサッドさ、キャッチーさを兼ね備えていて楽曲とのバランスは90'sという時期のエモの魅力を余すことなく出しているものとなっています。
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HAMMERED HULLS / CAREENING (LP)
¥3,300
昨年の素晴らしかったジャパンツアーの記憶も新しい、Faith、Make-Up、Ted Leo、Wild Flagなどなど書ききれないD.C、Dischordの歴史とも言えるメンバーにより結成されたポストハードコアバンドの2022年にリリースした1stアルバム。Ian MacKayeプロデュースの元、Inner Ear Studioでレコーディング・ミックスされ、Dischordよりリリースという鉄壁の布陣。年齢を重ねたからこそ出せるハードコアのエモーショナルな要素が凝縮されたような音楽性。10代の速さではないが、パワフルでアグレッシブな楽曲にボーカルがのった瞬間に一気に燃えたぎる熱量もパンパンに感じます。そして、同時にFUGAZIやHooverといったバンドの溜めて溜めてのヒリヒリ感もあり、めちゃくちゃ痺れる。ハードコア一辺倒の音楽性では決してなく、ポストハードコア、パンク、ガレージ、ポストロック、アートロックなどメンバーそれぞれのバックグランドや興味によって作られているように思えます。革新的な意欲とは違う、D.Cの音楽とそこから連なっていった音楽をあくまで自然に昇華している部分に懐古ではない瑞々しさがあって、だからこそ何度も聴いてしまう。速さとグルーヴ、緊張と弛緩、実験性と王道が全て詰まった名盤です。
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Circles / Still. (LP)
¥3,400
SOLD OUT
フランス・ナントのエモーティヴハードコアバンドがShield RecordingsとExtinction Burstよりリリースした1stアルバム。2017年から活動を始め、これまで3枚のEPをリリースしてきた彼らの満を持しての12曲入りフルアルバムとなります。メロディアスでディスコーダントなコード進行、Minor Threatを思い浮かべる爽快なかっ飛ばしパート、メロディアスさをより追求したエモーショナルなギター。Dag NastyやEmbraceなどといったバンドの影響下のサウンドであるのは明白ですが、ストップ&ゴーやブレイクパート、ギリギリ歌い上げないラインのボーカル("Lung"では最後にド級のメロディを歌いげてますが)はUniform Choiceぽかったりして、その辺り要素をモダンに昇華させたポストレボリューションサマーと言える質感に仕上がっています。近年で一番近いものを感じたバンドはPraise。速い曲も素晴らしいけどミドルテンポの“Waves”でのアンサンブルとポップネスははち切れんばかりに良かった。ハードコアなんだけどその枠でたくさんのアプローチがされていて、聴いていて熱くなると同時にこのアルバムのジャケットのような鮮やかなイメージがそのまま湧いてくるポジティヴなエネルギーに満ちた作品となっています。
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Feverchild / Altering a Memory (12")
¥3,700
SOLD OUT
ベルギーのエモバンドがリリースした2023年作8曲入りEP。リリースはSunday Drive RecordsとRe-Ignition Recordsより。2021年の鮮烈なデビュー以来、オールドスクールなエモフリークがまさに現代に求めていたサウンドを作り続けている彼らの12インチフォーマットでのリリース。燃えるように重厚に進むミドルテンポパートからメランコリックなアルペジオパートでの哀愁のコントラスト。1st EP以降の流れを鑑みるとかなりインディロックな方向に進むのではと予想していましたが、自分の杞憂をイントロからの"City of Flowers"で吹き飛ばしてくれました。向き合い方がかなり難解な90'sエモというサウンドに対し、小細工なしで真正面から向き合っている王道的エモ。作品全体としてややBPMを落としていて、そこから丁寧に展開していく楽曲にはエモに大事な気怠さとドラマチック性が大い内包されています。"Eva"のアコースティックサウンドの試みや各楽曲のコーラスワークからも感じ取れるのですが、やはりSunny Day Real Estateの影響はかなり大きいのかなと。MINDED FURY、Animal Clubといったベルギーハードコアバンドのメンバーで構成されており、ハードコアをやっていた・やっているメンバーがやるエモという正統派の流れも憎いところ。そして、それは懐古的な考えでなく間違いなくサウンドとしての深みを違うものにしています。
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THE ACT WE ACT / フリッカー (LP)
¥2,800
SOLD OUT
名古屋を中心に活動するTHE ACT WE ACTが自身のレーベルKYUSU RECORDSより3rd album「フリッカー」をアナログレコード(DLコード付き)、Bandcampでリリース。激しさと妖しさ、目まぐるしく変化するリズムと音楽性。多様なバックグラウンドとアイデアから作り出されたであろう楽曲は表層的なストレンジなだけでは決して生まれない、聴く角度で様々な新しい側面が現れる面白さに溢れています。かなりフリージャズの影響が大きいのかなと思っていて、それがパンクやハードコアのフィルターを通すと今作のような終始ビリビリとした緊張感が漂うアブストラクトな音楽として仕上がるのかなと。トランペットの音色と絡み合って妖しくムーディになる一瞬はD.C通過後のシカゴ音響派の世界へ連れて行ってくれるようです。 https://kyusurecords.bandcamp.com/album/flicker
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Loma Prieta / Last (LP)
¥3,800
SOLD OUT
カリフォルニア・サンフランシスコの激情ハードコア、ポストハードコアバンドの2023年最新作。Deathwishよりリリース。激情ハードコアの持つダークで暴力的な魅力は内包しつつ、メロディアスかつ多様なアプローチとソングライティングがポジティヴな方向へと向かうエネルギーを感じさせる。初期のピュアな激情サウンドから徐々に変化を続けていましたが、ネクストレベルを感じさせるアーティスティックな広がりのあるサウンドへと進化した内容であると言えます。音楽性に加えて楽曲面のトータルでのクオリティの高さもガッチリとフィットしていて、どこか高尚さとハイプさが漂っているのは各自好みの分かれるところかもしれませんが、やっぱり一つ一つの曲が抜群に良い。近年のFiddleheadやHigh Visなどが行っていたハードコアをオルタナティヴな解釈で再構築するという行為を、彼らも激情ハードコアという枠組みの中で実践した作品であると思います。現行のハードコア影響下の音楽がどのような方向に向かっているかということを彼らの視点で教えてくれています。アルバムトータルでの一貫性もしっかりと確立されているので是非アルバム通しで聴いてください。
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Native Nod / This Can't Exist (LP)
¥3,400
SOLD OUT
ニュージャージーのエモ・ポストハードコアバンドがGern Blandsten Recordsより1992年〜1995年の間にリリースした3枚の7"を収録した編集盤をNumero Groupが初のLPでリリース。ライナーノーツ、当時の写真やフライヤーなど掲載されたブックレット付き。ダークで実験的、時折一気に燃え上がるようなエモーショナルなサウンド。DischordやEbullitionのポストハードコアとはまた違ったアプローチを行っており、ダークな部分はIndian Summerなどのプロトタイプエモ・激情に近しい部分を感じます。また、ネチネチした部分はNew Ageのハードコアバンドからタフさを取り払ったような質感でエモーティヴハードコアにも通じるところも面白いところです。Native Nodは後にThe Van PeltをやるChris Leoがメンバーということでもフォーカスされますが、今作の楽曲の中にもThe Van Peltへと受け継がれたであろうクリーンな不穏さとでも言うような、独特のスタイルが既に随所散りばめられています。ハードコア、ポストハードコア、エモが地続きな時代が故に生まれ、各地に共鳴した、この時代のマイルストーン的作品となっています。
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The Hated / Best Piece of Shit (2LP)
¥4,000
SOLD OUT
メリーランド・アナポリスのハードコアバンドがリリースした音源・未発表曲をまとめた編集盤。1985年にテープでリリースされた1stアルバム"The Best Piece Of Shit Vol. 3"、No More We Cry EPにコンピ収録曲と未発表曲の14曲を加えてリマスタリングした全25曲2LP。GephardtとKen Shipleyによるバンドとシーンに関する長いエッセイと、バンドのアーカイブからの数十枚の写真も付属しています。Numero Groupによる再発・発掘プロジェクト全5回のうちの第1弾です。 アーリーエモやポストハードコアとしての印象が強い彼らですが今作に収録されている楽曲は80'sアメリカンハードコアの速い・軽い・キャッチーという要素を全面に出しながらも後のエモ・ポストハードコアとしての彼らの音楽性へと繋がる片鱗が散りばめられたサウンド。ちょっとタイプは違いますがバラエティの豊かさと奥深さという意味ではSCREAMが思い浮かびますが、とりあえずシンプルにめちゃくちゃカッコ良いです。初期のHusker Duのようなノイジーなギターから繰り出されるドラマチックなギターとレボリューションサマー前夜の知的なメロディラインのベース、軽快に歌うように叩くドラム、ボーカルは曲によってはかなりメロディックに近いアプローチをしていています。良いメロディを追求し、取り入れることでハードコアのエモーショナル性をより引き出そうとしたのは後のレボリューションサマーの流れに繋がってきますし、この時期のD.Cのバンドと比較しても抜群にメロディが良いです。奇しくも今作収録の1stアルバムとRites of Springの1stアルバムが同年に出ているのは運命的なものを感じます。
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Fiddlehead / Death Is Nothing To Us (LP)
¥3,700
Have Heart、Verse、Basement等の2000年代から2010年半ばまで活躍したハードコアバンド、エモバンドを中心としたメンバーにより結成された、ポストハードコア・インディーロックバンドの2023年リリースの3rdアルバム。Run For Cover Recordsより。百戦錬磨の5人のグルーヴから生み出される、“ハードコア通過後“としか形容できない独特のうねり。エネルギッシュでありつつ彼らの過ごしてきた時間も確かに感じさせる哀愁。革新的目新しさに溢れているサウンドではないはずなのに何故こんなに瑞々しく、またエモーショナルに響くのでしょうか。前作からの完全な延長線上でありつつ、より渋い方向へ向かった気がします。このバンドの心臓と言えるドラムShawnの入魂のスネアとフロアタムさばきに燃え上がり、深みのサッドギターに胸を締め付けられ、ボーカルPatの無骨ながらもメロディアスに歌い上げるパートに涙腺を刺激されます。Dischordのバンドを想起させるようなサウンドではありますが、Fiddleheadは根底にあるセンスがモダンなバンドで、現行のインディロックとも親和性が高いです。なのでRun For Coverからリリースしてきているのも凄く納得できます。もちろんハードコアへのリスペクトと愛は今なお深く、Angel Du$t、Trapped Under IceボーカルのJusticeを迎えた"True Hardcore(Ⅱ)"で、自分達のハードコアの意味と思いを歌っています。現代におけるエモとポストハードコアの形を追求する洗練された作品。
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Fiddlehead / Death Is Nothing To Us (CD)
¥2,200
※こちらは海外盤になります。 Have Heart、Verse、Basement等の2000年代から2010年半ばまで活躍したハードコアバンド、エモバンドを中心としたメンバーにより結成された、ポストハードコア・インディーロックバンドの2023年リリースの3rdアルバム。Run For Cover Recordsより。百戦錬磨の5人のグルーヴから生み出される、“ハードコア通過後“としか形容できない独特のうねり。エネルギッシュでありつつ彼らの過ごしてきた時間も確かに感じさせる哀愁。革新的目新しさに溢れているサウンドではないはずなのに何故こんなに瑞々しく、またエモーショナルに響くのでしょうか。前作からの完全な延長線上でありつつ、より渋い方向へ向かった気がします。このバンドの心臓と言えるドラムShawnの入魂のスネアとフロアタムさばきに燃え上がり、深みのサッドギターに胸を締め付けられ、ボーカルPatの無骨ながらもメロディアスに歌い上げるパートに涙腺を刺激されます。Dischordのバンドを想起させるようなサウンドではありますが、Fiddleheadは根底にあるセンスがモダンなバンドで、現行のインディロックとも親和性が高いです。なのでRun For Coverからリリースしてきているのも凄く納得できます。もちろんハードコアへのリスペクトと愛は今なお深く、Angel Du$t、Trapped Under IceボーカルのJusticeを迎えた"True Hardcore(Ⅱ)"で、自分達のハードコアの意味と思いを歌っています。現代におけるエモとポストハードコアの形を追求する洗練された作品。
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Militarie Gun / Life Under the Gun (LP)
¥4,000
SOLD OUT
Drug ChurchやRegional Justice Centerのメンバーにより結成されたLAのオルタナティヴバンドの2023年リリースの1stアルバム。リリースはLoma Vistaより。全体的に音数はシンプルになりつつも弱々しい印象は全く無い、洗練されたパワフルさと、何よりキャッチーさとポップネスが楽曲全面に出た、確実にこれまでから一つ先へ進化したサウンドとなっています。過去3作のEPで見せていた荒々しいポストハードコアからオルタナティヴ化していく流れを踏まえつつ、The Stone Rosesをどこか彷彿とするような清涼感のあるアプローチを上手く取り入れていたり、より奥深いバックグラウンドで磨き上げられています。ハードコアやパンクを通過してきたものにしか無い、なんとも言えないザラザラ感に刺激されつつ、やっていることは現行のUSメジャーのギターロック、オルタナティヴロック。これがめちゃくちゃ腑に落ちる塩梅で完成されています。これは個人的に現代においてのRival Schoolsなんじゃ無いかなと勝手に思っています。ハードコアを下地としながらもより多様でオーバーグラウンド化を恐れないアグレッシヴな姿勢は現行のTurnstyle、One Step Closerにも通じるところがあります。UKでいうとHigh Visがやっていることであり、このハードコアのオルタナ化の流れはめちゃくちゃ面白いと思います。現代のUSにおいてのエモの一つの形なのかも。
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Orchid / ST (LP)
¥3,600
SOLD OUT
マサチューセッツ・アマーストの激情ハードコアバンドの2001年にEbullition Recordsよりリリースしていた彼らの3rdアルバムにしてラスト作のリイシュー盤。ゲートフォールドジャケ、カラー盤。カオスとエモーショナルの暴力と言えるような90年代の激情ハードコアを包括しつつも最先端のサウンド。圧倒的な勢いで目まぐるしく変わる曲展開と不意に涙腺を刺激してくるようなサッドすぎるギターのメロディ、マッチョさとは対極の凶暴で悲痛な叫びが作り出すダークな世界観。終始カオティックなようで計算された繊細さ、そこから作り出される狂気的な暴力性はエモバイオレンスと言う名がまさに相応しいと思います。mohinderやreversal of manをより多様なアプローチとアイデアで再構築したような、ラスト作にして完全に激情ハードコアのスタイルを物凄いレベルで確立した作品になっています。
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CORIKY / st (LP)
¥2,600
Ian MacKaye (Minor Threat、Fugazi、The Evens)、 Amy Farina (The Warmers、The Evens)、Joe Lally (Fugazi、The Messthetics)というDischordの歴史そのものと言えるような3人が結成したD.Cのポストハードコアバンドの2020年にリリースした1stアルバム。Joe Lallyのベースが作り出す柔らかな不穏さとでも言うような薄くゆらゆらと漂う緊張感、Ianが影響を公言しているJimi HendrixやTed Nugentといったアーティストのネットリと張り付くようなブルースの質感、後期fugaziにあったようなムーディな不協和音、時折現れるThe Evensのような耳馴染みの良いメロディと、全てが繋がってしまう唯一無二のサウンド。ハードコア、ポストハードコア、彼らの様々な「これまで」を経てきたから今だからこそ到達できたスタイルだと思います。音数が減り空いた空間から染み出してくる練り上げられた乾いたエネルギーは円熟味、哀愁という言葉がピッタリながらも未だアイデアは尽きない、驚きと新しい発見のある一枚。
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fugazi / In on the Kill Taker (LP)
¥2,700
D.Cのポストハードコアバンドが1993年にDischordよりリリースした3rdアルバムの2009年Silver Sonyaによるリマスター盤。Ted NiceleyとDon Zientaraによるプロデュースのもと、Inner Ear Studiosにてレコーディングという磐石の布陣で製作された今作。全編に渡りどこか殺伐としていて、鋭く切り付けられるような攻撃性を覚える作品。それぞれの楽器の一音一音、歌われる言葉とメロディの一つ一つがあまりに生々しくエネルギーに満ち溢れ躍動しています。 アルバムの幕を開ける"Facet Squared"のビリビリに張り詰めた緊張感、そこから一気に“Public Witness Program”へ雪崩こみ燃え上がる爽快感、"Smallpox Champion"の狂った不穏さからの一気に視界が開けていく恍惚感、 "Sweet and Low"の乾いたムーディさ、ポストハードコアという言葉をはみだし、書き換えていくアイデアと実験性が1曲毎に詰め込まれています。ロラパルーザ、MTV、オルタナ・グランジブーム、広義のパンクという音楽が商業主義に飲み込まれていく90年代の中で提示された、リアルでオルタナティヴなパンクミュージックと言えるのではないでしょうか。
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Q and Not U / Different Damage (LP)
¥2,700
D.Cのポストハードコアバンドが2002年にDischordよりリリースした2ndアルバム。プロデューサーにIan MacKayeとDon Zientaraを迎えInner Ear Recordsにて制作された。前作よりMatthew Borlikの脱退からトリオ編成になった今作。ドラムJohn Davisの複雑かつ軽快なリズムを土台とし、シンプルで彩り豊かなメロディが絡み合うことで生まれた異質なポップネス。前作では2本のギターの重なりで作られるカタルシスがありましたが、今作はギターが一本になり、その代わりに生まれた余白でクリアで繊細で、時に力強いアンサンブルが作り出されており、各楽器の音の広がりが増したものになっています。Dischordのポストハードコアの部分は残しながらもより多様なアイデアとアプローチがリズムでもフレーズでも曲構成でも随所に光っており今尚驚かされます。ダンサブルで実験的、ポストパンク、R&B、シカゴ音響派などを飲み込んだように思わせる、Dischordの中でも異質なサウンド。それはリズミカルという方向に振り切ったfugaziの別の未来であったようにも感じさせられます。
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JAWBOX / For Your Own Special Sweetheart (LP)
¥2,700
D.Cのポストハードコアバンドが1994年にAtlantic Recordsよりリリースした3rdアルバムのDesotoとDischordによるリイシュー盤。ヒリヒリとした緊張感と実験性を内包し、圧倒的なダイナミズムでそれを放出したサウンド。J.ROBBINS節に磨きをかけつつDISCHORDの先を見据えた作品であり、 複雑さ、難解さを持ちながらも圧倒的に聴きやすいというロック、グランジ、ギターロック、エモと、どのジャンルへでもリーチできるように作り上げられた凄まじい作品となっています。ポップミュージックには決して収まらない音楽性でありつつも、アンダーグラウンドで構築してきたサウンドをこれまでにないスケールで表現している遊びとしてのメジャー。今作よりドラムを叩くZacharyのタイトでエネルギッシュなリズムとボトムを這うようなKimのベースが合わさり、抜けが良いクリアなサウンドでありながら、どこか湿り気のあるへばり付くような質感。その上で不穏にメロディアスに絡み合う2本のギターが作りだす巨大なウネリ、それががもたらす高揚感に酔いしれてしまいます。当時シングルでリリースされた"Savory"に収録されていたBig Boysのカヴァー“Sound On Sound“を含む3曲をボーナストラックとして収録しています。
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Faith / Subject to Change plus First Demo (LP)
¥2,500
D.Cのハードコアバンドが1983年にDischordよりリリースした8曲入りの2nd EPに1st Demoの11曲を加えた編集盤。1981年、Minor Threat、The Untouchablesなどが立て続けに活動を終えたD.Cの初めの休眠期間とも言える頃に、元The UntouchabelsのAlec MacKayeをボーカルに元The Untouchables、元S.O.Aのメンバーを中心に結成されました。 Ian MacKayeプロデュースで制作された2nd EPはDemoやVoidとのスプリットの時と比べ、セカンドギタリストとして元The UntouchablesのEddie Janneyが加わったことで、よりメロディアスな表現を獲得したものとなっています。パワフルな従来のハードコアのリズムとキャッチーなコード進行、ところどころに添えられる彩のあるメロディがこれまで以上にハードコアをエモーショナルに響かせるサウンドであり、Alecのボーカルはただ怒り叫ぶだけではなく叙情的かつ明瞭であり、私たちに突き刺さります。Faithの音楽はしばしば怒りに勝る。One Last WishやRites of Springへの布石となるレヴォリューションサマー前夜。VoidとのスプリットアルバムにおいてしばしばVoid側ばかりがフューチャーされますが、Faithはずっと最高であり続けていることを証明してるように思います。
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BENTON FALLS / FIGHTING STARLIGHT (LP)
¥4,000
SOLD OUT
カリフォルニアのエモバンドが2001年にDeep ElmからCDでリリースしていた1stアルバムをThirty Something Recordsが2023年にレコードでリイシュー。2009年のCount Your Lucky Stars以来の2回目のリイシューとなります。 Deep Elmの名コンピ、エモ日記への収録やEthel MeserveのRyan Gerberがギタリストとして在籍していたということでも知る人は多いかと思います。不穏さと美しさが入り混じりつつ、独特のグルーヴが生み出す儚いエモーショナル。センスとしか言えないRyanのギターワークはサッドで幻想的で、彼らの楽曲の雰囲気を完全に決定づけていると感じさせます。また、特徴としてはエモというジャンルとしては珍しくもあるボーカルの高い歌唱力。個人的にBenton FallsかChamberlainのボーカルか位素晴らしいです。この力強く透明感のあるボーカルが他のエモバンドとまた一線を画しています。2000年以降のより美エモ的な要素が強くなっていくDeep Elmのバンドをはじめとするエモとそれまでの90'sエモの両方の要素を持っていて、その過渡期を象徴する内容になっているのではないでしょうか。Temporary Contemporary時のCross My Heartにも通じます。版権の問題かエモのリイシューもののジャケが完全に一新されるとあちゃーと思うことが個人的に多いのですが、このジャケはまだそんなに悪くないのではないでしょうか。間違いなくエモのヒストリーに名前を刻む一枚。
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POP UNKNOWN / IF ARSENIC FAILS, TRY ALGEBRA (LP)
¥3,500
1997年から2002年まで活動したテキサス・オースティンのエモバンドが1999年にDeep Elmからリリースしていた1stアルバムをドイツThirty Something Recordsがリイシュー。2022年リリース。物悲しさと美しさをあくまでキャッチーに消化したこれぞ90's Deep Elmなエモ。シンプルながらもサッドで艶やかさのあるアルペジオにジリジリと引き込まれ、クライマックスでドライブがかかる曲展開はドラマチックで神聖さすら感じさせられます。個人的に"Hanging on a Thread"はギターのフィードバックすら叙情的に響いて堪らないです。90'sのエモバンドの知名度としてはやや隠れ気味かもですが、楽曲の完成度もかなり高くテンション的にはオーバーグラウンドの2歩手前、Jimmy Eat Worldなどのバンドに続きえたクオリティだと思います。サウンドとしてはMineral、The Appleseed Castに近い印象で、同時代のこの辺りのバンドは全編を通してギターが全面に出ているのはエモとギターロックの親和性、というかハードコアやパンクサイドからのギターロックへの回答なんだと思わせてくれます。Mineral、Imbroco、Fourth Grade Nothingのメンバーが在籍していたというのもエモファンとしてはくすぐられるポイントとなっています。
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CAMBER / BEAUTIFUL CHARADE (LP)
¥3,700
SOLD OUT
ニューヨークのエモバンドが1997年にDeep ElmからCDでリリースしていた1stアルバムをドイツのThirty Something Recordsが2023年にレコードでリイシュー。やや重厚でダイナミズムを感じる楽曲に、胸を締めつけるという言葉がぴったりのボーカルのメロディが広がっていく。こうして作り出されるドラマチック性こそがエモだと再認識させてくれるお手本のようなサウンド。初っ端の"Hollowed-Out"から膝から崩れ落ちそうになるほどの衝撃です。Deep Elmの名コンピであるエモ日記の記念すべき第一弾に収録されていることで彼らのことを知っている人も多いかと思いますが、縦ノリのリズムとディストーションギター、ハードコアの影響を感じさせるピリピリした緊張感のある展開も見え隠れする音楽性はShiftやBy a ThreadなどのRevelationエモやFar Apartなんかにも近い印象です。勿論、ギターをかなり鳴かせつつ多彩なフレーズが散りばめられている部分とネチっこくも伸びやかなボーカルは"The Power of Failing"の時のMineralなどに通じていて、この時代のDeep Elmのバンドらしいなと思います。エモとしても、ポストハードコアからギターロックとしても聴ける極上の内容に仕上がっています。
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I RECOVER / Until I Wake Again (LP)
¥3,500
SOLD OUT
ドイツ・ケルンにて元PUNCHのDanを中心に結成されたポストハードコアバンドが初の12インチの形態でリリースした7曲入りの音源。The Breathのメンバー運営によるHi Liberate Records、DAIEI SPRAYのメンバー運営のSakanade RecordsをはじめExtinction Burst、i.corrupt Recordsなど7レーベルによる共同リリースとなっています。ハードでアグレッシヴ、メロディアスでドラマチックな、紛れもなく80年代半ばからのレボリューションサマーの衝動とスタイルを持ったサウンド。One Last WishやEmbraceなども彷彿とさせる、レイジングな要素をボーカルも演奏もより叙情的に表現したエモーショナルなハードコアとなっています。その叙情性はある時はポジティヴなエネルギーを感じさせ、ある時は悲しくシリアスに響きます。また、ハードコア、エモ、メロディックを思わせる展開やフレーズが詰まった楽曲になっているので聴いていて1作品としての華やかさもあります。PRAISEやSEGWEIといったリヴァイバルバンドの遺伝子も感じ、当時のレボリューションサマーのムーヴメントのような爆発的なものではないですが、現代でなお力強く燃え続けるサウンドなんだなと思わされます。
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Falling Forward / Let These Days Pass: The Complete Anthology 1991-1995 (LP)
¥3,300
ケンタッキー州ルイビルで結成されたハードコアバンドが1991年から1995年の間にDoghouse、Initial Recordsなどからリリースした全音源をまとめた編集盤をTemporary Residence Limitedがリリース。オリジナルマスターテープから修復・リマスターされた本作は、貴重な未発表写真、チラシ、歌詞を含む20ページのフルカラー・ブックレットが付属しています。 燃えあがるエモーショナルときらめくメロディが眩しい極上のエモーティヴハードコア。Turning Point以降のメタリックかつ独特の抒情性とグルーヴを持つエモーショナルなハードコアであり、そこに歌い上げるキャッチーと言い切って良いメロディ入ってくることでつくられる独特の楽曲は90年代前半のハードコアからは逸脱したスタイルです。Turning Pointが"Its Always Darkest...Before The Dawn"でやったハードコアの持つエモーショナルな要素を浮立たせた音楽性をよりドラマチックな方向に押し進めたサウンドであり、アメリカンハードコアがレボリューションサマーでやったようにユースクルーサイドのバンドがハードコアの次の形を模索したのがこの形なのかなと勝手に推察しています。"Sire"のクリーントーンでのエモーショナルアルペジオを入れてくるお洒落さだけでも他のエモーティヴハードコアバンド群から頭2つ、3つ抜けていることが分かる、この手のバンドの中でも結構別格的なバンドだと思っています。立体感のある縦ノリのグルーヴに切なさを感じさせるメロディが合わさる瞬間はRevelation系エモが既に完成しているような気もしますし、この音楽性の先にElliottへと繋がるハードコアからエモへの橋渡しをしたという意味ではSplit Lipと並びハードコアとエモの歴史を紐解く上でも非常に重要なバンドなのではなでしょうか。
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Karate / st (LP)
¥3,200
1993年結成のマサチューセッツ・ボストンのロック・ポストハードコアバンドが1995年にリリースした1stアルバムをNumero Groupがリイシュー。少ない音数と気怠げなリズム、淡白なボーカルとその間で変幻自在にうねるベース。終始得体の知れない緊張感が漂う彼らにしか作れなかった不穏でサッドなグルーヴはドラマチックな展開も大げさな叫びもいらないと気付かされる極上の寂寥感。Dischordの音響派に流れていくHoover周辺のバンドやUnwoundなどのポストハードコアの影響が色濃く出ており、そこにDusterなどのスロウコアの要素とジャズからの影響という部分でより捉え所のない音楽性になっています。曲の中にある余白の使い方が彼らは素晴らしくて90年代半ばのパンクやハードコア、またはグランジの爆音での攻撃性に対してスローなリズムと静寂を用いて対抗していたのかなと勝手に思っています。曲は長くて良いし、共感したいだけのメロディもいらない。今こそ彼らの魅力に再度耳を傾けるべきな静かなエネルギー渦巻く作品。
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