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HAMMERED HULLS / CAREENING (LP)
¥3,300
昨年の素晴らしかったジャパンツアーの記憶も新しい、Faith、Make-Up、Ted Leo、Wild Flagなどなど書ききれないD.C、Dischordの歴史とも言えるメンバーにより結成されたポストハードコアバンドの2022年にリリースした1stアルバム。Ian MacKayeプロデュースの元、Inner Ear Studioでレコーディング・ミックスされ、Dischordよりリリースという鉄壁の布陣。年齢を重ねたからこそ出せるハードコアのエモーショナルな要素が凝縮されたような音楽性。10代の速さではないが、パワフルでアグレッシブな楽曲にボーカルがのった瞬間に一気に燃えたぎる熱量もパンパンに感じます。そして、同時にFUGAZIやHooverといったバンドの溜めて溜めてのヒリヒリ感もあり、めちゃくちゃ痺れる。ハードコア一辺倒の音楽性では決してなく、ポストハードコア、パンク、ガレージ、ポストロック、アートロックなどメンバーそれぞれのバックグランドや興味によって作られているように思えます。革新的な意欲とは違う、D.Cの音楽とそこから連なっていった音楽をあくまで自然に昇華している部分に懐古ではない瑞々しさがあって、だからこそ何度も聴いてしまう。速さとグルーヴ、緊張と弛緩、実験性と王道が全て詰まった名盤です。
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CORIKY / st (LP)
¥2,600
Ian MacKaye (Minor Threat、Fugazi、The Evens)、 Amy Farina (The Warmers、The Evens)、Joe Lally (Fugazi、The Messthetics)というDischordの歴史そのものと言えるような3人が結成したD.Cのポストハードコアバンドの2020年にリリースした1stアルバム。Joe Lallyのベースが作り出す柔らかな不穏さとでも言うような薄くゆらゆらと漂う緊張感、Ianが影響を公言しているJimi HendrixやTed Nugentといったアーティストのネットリと張り付くようなブルースの質感、後期fugaziにあったようなムーディな不協和音、時折現れるThe Evensのような耳馴染みの良いメロディと、全てが繋がってしまう唯一無二のサウンド。ハードコア、ポストハードコア、彼らの様々な「これまで」を経てきたから今だからこそ到達できたスタイルだと思います。音数が減り空いた空間から染み出してくる練り上げられた乾いたエネルギーは円熟味、哀愁という言葉がピッタリながらも未だアイデアは尽きない、驚きと新しい発見のある一枚。
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Q and Not U / Different Damage (LP)
¥2,700
D.Cのポストハードコアバンドが2002年にDischordよりリリースした2ndアルバム。プロデューサーにIan MacKayeとDon Zientaraを迎えInner Ear Recordsにて制作された。前作よりMatthew Borlikの脱退からトリオ編成になった今作。ドラムJohn Davisの複雑かつ軽快なリズムを土台とし、シンプルで彩り豊かなメロディが絡み合うことで生まれた異質なポップネス。前作では2本のギターの重なりで作られるカタルシスがありましたが、今作はギターが一本になり、その代わりに生まれた余白でクリアで繊細で、時に力強いアンサンブルが作り出されており、各楽器の音の広がりが増したものになっています。Dischordのポストハードコアの部分は残しながらもより多様なアイデアとアプローチがリズムでもフレーズでも曲構成でも随所に光っており今尚驚かされます。ダンサブルで実験的、ポストパンク、R&B、シカゴ音響派などを飲み込んだように思わせる、Dischordの中でも異質なサウンド。それはリズミカルという方向に振り切ったfugaziの別の未来であったようにも感じさせられます。
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Karate / st (LP)
¥3,200
1993年結成のマサチューセッツ・ボストンのロック・ポストハードコアバンドが1995年にリリースした1stアルバムをNumero Groupがリイシュー。少ない音数と気怠げなリズム、淡白なボーカルとその間で変幻自在にうねるベース。終始得体の知れない緊張感が漂う彼らにしか作れなかった不穏でサッドなグルーヴはドラマチックな展開も大げさな叫びもいらないと気付かされる極上の寂寥感。Dischordの音響派に流れていくHoover周辺のバンドやUnwoundなどのポストハードコアの影響が色濃く出ており、そこにDusterなどのスロウコアの要素とジャズからの影響という部分でより捉え所のない音楽性になっています。曲の中にある余白の使い方が彼らは素晴らしくて90年代半ばのパンクやハードコア、またはグランジの爆音での攻撃性に対してスローなリズムと静寂を用いて対抗していたのかなと勝手に思っています。曲は長くて良いし、共感したいだけのメロディもいらない。今こそ彼らの魅力に再度耳を傾けるべきな静かなエネルギー渦巻く作品。
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The Sorts / Six Plus (LP)
¥3,000
SOLD OUT
1994年結成のD.Cのポストロックバンドが2002年にLuckyhorse Industriesよりリリースした4thアルバムをBCoreがリイシュー。滑らかなでサイケデリックな浮遊感にロマンチックを感じながらも、微かな不穏さが見え隠れする一筋縄ではいかないポストロック。ファンクやジャズ、フュージョンからダブまで多彩な音楽的影響が伺えるサウンドとなっています。リラックスしているようで張り詰めていて実験的、ハードコア畑とは違った音楽をミュージシャンシップを持って作り上げた、D.Cハードコア通過後の音楽をFugaziとは別ベクトルの形で提示したバンドの一つだと思います。Rain Like the Sound of Trainsやsevensのoshua LaRue、HooverのChristopher Farrall、The Crownhate RuinやAbilene、June of 44のFred Erskineというメンバーによって構成されていて、それらのバンドと同じくD.Cのハードコア・ポストハードコアの文脈からシカゴ音響派へと繋がるバンドです。サウンドとしてもLungfishとTortoiseあたりがドンピシャでフラッシュバックします。ハードコアやポストハードコアからは一聴すると離れた音楽性ですが、そこを通っていないと決して出せないなんとも言えない空気がしっかりと内包されています。奥深いアンサンブルが何層にも重なった、イマジネーション溢れる作品となっています。
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