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WELLSAID / REGRETOPIA (LP)
¥3,680
香港のオルタナティブロックバンドが2024年にメンバーのレーベルであるUN TOMORROW、AIRHEAD RECORDSよりリリースした3rdアルバム。ザラザラとした質感から生まれるどことない不安定さ、その中で表現される楽曲はキャッチーでありながらも漠然とした寂寥感に溢れたサウンド。作品毎に音楽性を変化させてきていましたが、今作では元々あったトゥインクルエモの要素はなくなり、ポストハードコアやオルタナティヴロックの源流からの影響が色濃くなっています。シンプルになりつつより幅が広がっている印象で、枯れた質感はKarateやSlint、オルタティヴでポップなアプローチはBuilt to spillなどといったバンドが思い浮かびました。A面3曲目"The Abattoir"は個人的に特に気に入っていてレボリューションサマー彷彿のリフとボーカルを主軸にしつつギターソロがあったり最後の激情チックな締め方までが上手くまとまっていて、面白くてしっかりカッコ良い。この作品内にある多様な要素が凝縮された一曲かなと思います。ラストの"Ein"のキャッチーなコーラスのままのフェードアウトはエモもポストハードコアも突き抜けていく感じが気持ち良く爽快。90'sから現在までにある雑多性をオルタナティヴなロックとして昇華している作品になっています。 https://sweatyandcramped.bandcamp.com/album/regretopia
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HAMMERED HULLS / CAREENING (LP)
¥3,300
昨年の素晴らしかったジャパンツアーの記憶も新しい、Faith、Make-Up、Ted Leo、Wild Flagなどなど書ききれないD.C、Dischordの歴史とも言えるメンバーにより結成されたポストハードコアバンドの2022年にリリースした1stアルバム。Ian MacKayeプロデュースの元、Inner Ear Studioでレコーディング・ミックスされ、Dischordよりリリースという鉄壁の布陣。年齢を重ねたからこそ出せるハードコアのエモーショナルな要素が凝縮されたような音楽性。10代の速さではないが、パワフルでアグレッシブな楽曲にボーカルがのった瞬間に一気に燃えたぎる熱量もパンパンに感じます。そして、同時にFUGAZIやHooverといったバンドの溜めて溜めてのヒリヒリ感もあり、めちゃくちゃ痺れる。ハードコア一辺倒の音楽性では決してなく、ポストハードコア、パンク、ガレージ、ポストロック、アートロックなどメンバーそれぞれのバックグランドや興味によって作られているように思えます。革新的な意欲とは違う、D.Cの音楽とそこから連なっていった音楽をあくまで自然に昇華している部分に懐古ではない瑞々しさがあって、だからこそ何度も聴いてしまう。速さとグルーヴ、緊張と弛緩、実験性と王道が全て詰まった名盤です。
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Two layers of paint / Willing to roll (LP)
¥3,300
北海道のギター&ドラム編成のパンクデュオの2024年リリース4thアルバム。DLコード付き。デュオ編成では初のリリースとなります。リリースはI HATE SMOKE RECORDSより。子気味良いリズムに渇いたギターが踊りまくるメロディックパンク。カントリー、フォーク、ブルース、ジャズ、何層にも重なった普遍的なルーツミュージックの蓄積から生み出される、名フレーズの数々と鮮やかにテンションを変えるコード進行。大枠でのパンクと呼ばれるジャンルではなかなか出会えない独創的な彩りに溢れていながら、F.Y.P由来のラフさとグッドメロディでそれを仕上げている、あくまでパンクのサウンド。Recess RecordsをはじめPlan It X Recordsなどからリリースしたバンドに通じるような、パンクに実験的な独創性とカントリー・フォークミュージックが深いところで混じり合っていて、パンクを真似てパンクをやっていないソングライティングの奥深さがうかがえます。Good Luckとかも個人的に彷彿としました。激しくキャッチーに歌われるメロディ、ドラムとギターのサウンドの質感に日本の湿度感とは違った渇きがあり、そこから醸し出される哀愁と暖かさが熱く沁み込んでくるアルバムトータルで素晴らしい全10曲。
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Feverchild / Altering a Memory (12")
¥3,700
SOLD OUT
ベルギーのエモバンドがリリースした2023年作8曲入りEP。リリースはSunday Drive RecordsとRe-Ignition Recordsより。2021年の鮮烈なデビュー以来、オールドスクールなエモフリークがまさに現代に求めていたサウンドを作り続けている彼らの12インチフォーマットでのリリース。燃えるように重厚に進むミドルテンポパートからメランコリックなアルペジオパートでの哀愁のコントラスト。1st EP以降の流れを鑑みるとかなりインディロックな方向に進むのではと予想していましたが、自分の杞憂をイントロからの"City of Flowers"で吹き飛ばしてくれました。向き合い方がかなり難解な90'sエモというサウンドに対し、小細工なしで真正面から向き合っている王道的エモ。作品全体としてややBPMを落としていて、そこから丁寧に展開していく楽曲にはエモに大事な気怠さとドラマチック性が大い内包されています。"Eva"のアコースティックサウンドの試みや各楽曲のコーラスワークからも感じ取れるのですが、やはりSunny Day Real Estateの影響はかなり大きいのかなと。MINDED FURY、Animal Clubといったベルギーハードコアバンドのメンバーで構成されており、ハードコアをやっていた・やっているメンバーがやるエモという正統派の流れも憎いところ。そして、それは懐古的な考えでなく間違いなくサウンドとしての深みを違うものにしています。
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THE ACT WE ACT / フリッカー (LP)
¥2,800
SOLD OUT
名古屋を中心に活動するTHE ACT WE ACTが自身のレーベルKYUSU RECORDSより3rd album「フリッカー」をアナログレコード(DLコード付き)、Bandcampでリリース。激しさと妖しさ、目まぐるしく変化するリズムと音楽性。多様なバックグラウンドとアイデアから作り出されたであろう楽曲は表層的なストレンジなだけでは決して生まれない、聴く角度で様々な新しい側面が現れる面白さに溢れています。かなりフリージャズの影響が大きいのかなと思っていて、それがパンクやハードコアのフィルターを通すと今作のような終始ビリビリとした緊張感が漂うアブストラクトな音楽として仕上がるのかなと。トランペットの音色と絡み合って妖しくムーディになる一瞬はD.C通過後のシカゴ音響派の世界へ連れて行ってくれるようです。 https://kyusurecords.bandcamp.com/album/flicker
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Loma Prieta / Last (LP)
¥3,800
SOLD OUT
カリフォルニア・サンフランシスコの激情ハードコア、ポストハードコアバンドの2023年最新作。Deathwishよりリリース。激情ハードコアの持つダークで暴力的な魅力は内包しつつ、メロディアスかつ多様なアプローチとソングライティングがポジティヴな方向へと向かうエネルギーを感じさせる。初期のピュアな激情サウンドから徐々に変化を続けていましたが、ネクストレベルを感じさせるアーティスティックな広がりのあるサウンドへと進化した内容であると言えます。音楽性に加えて楽曲面のトータルでのクオリティの高さもガッチリとフィットしていて、どこか高尚さとハイプさが漂っているのは各自好みの分かれるところかもしれませんが、やっぱり一つ一つの曲が抜群に良い。近年のFiddleheadやHigh Visなどが行っていたハードコアをオルタナティヴな解釈で再構築するという行為を、彼らも激情ハードコアという枠組みの中で実践した作品であると思います。現行のハードコア影響下の音楽がどのような方向に向かっているかということを彼らの視点で教えてくれています。アルバムトータルでの一貫性もしっかりと確立されているので是非アルバム通しで聴いてください。
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TATXERS / ST
¥3,300
SOLD OUT
ITOIZ、ZARAMA、HERTZAINAKのようなバンドに大きな影響を受けたパンプローナ出身のパンク・パワーポップバンドの1stアルバム。バスク語で歌われる全11曲を収録。クリーンなギター・トーン、甘美なメロディー、耳馴染みの良いキャッチーなコーラスワーク。パンクのバックグラウンドをしっかりと感じさせるソリッドなニュアンスが随所に見られつつもどこか牧歌的な雰囲気も垣間見えたりして、それを全部グッドメロディでひっくるめて持っていくという憎いバランスになっています。各楽器のアンサンブルも絶妙なバランスでミニマムだけど力強い。2曲目の“Labanak”のもろなThe Clash節や全編を通してTeenage Fanclub感、カレッジロック的なニュアンスがあったりします。その上でしっかり1曲ごとにアップデートして現行の音楽として鳴らされている素敵な作品だと思います。
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Everyone Asked About You / Paper Airplanes, Paper Hearts (2LP)
¥4,200
SOLD OUT
90年代に活躍し、後年一部でカルト的な人気を博しているアーカンソー・リトルロックのエモバンドの音源をNumero Groupがリイシュー。本作"Paper Airplanes, Paper Hearts"は、1997年から2000年にかけてリリースされた"Let's Be Enemies"LPと2枚の7“、The Shyness ClinicとのSplitを含む、Everyone Asked About Youの全作音源集。オリジナルDATからリマスターされ、ゲートフォールド・チップオンスリーブ仕様、当時のフライヤー、写真、歌詞、そしてミッドウェストエモとモーグシンセサイザーを結ぶ重要なミッシングリンクに関するエッセイが詰まった20ページのブックが付属するという、エモの奥深さを堪能できる豪華な内容。蒼さと儚さが入り混じる2人のボーカル、シンプルかつ余白たっぷりなリズム隊に枯れたメランコリックなアルペジオ、それをシンセサイザーが優しく包み込む。少しカラッとした質感はミッドウェストエモであり、メロディ自体はキャッチー。時に私たちの心に沁みいり、時に高揚させるエモとして完璧なバランス。不安定さ、不完全さがオーバーグラウンドミュージックやクオリティという音楽的要素を凌駕する瞬間が納められている、エモフリークを熱くさせるのも納得のサウンドです。Jejune、Eldritch Anisette、近年のバンドだとKitty HawkやBlue Periodが好きな人は間違いなく気にいるサウンドです。 "Crazy"とか聴くとBraidの影響も受けたのかなと。90's emoの幻想は続きそうです。
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Fiddlehead / Death Is Nothing To Us (LP)
¥3,700
Have Heart、Verse、Basement等の2000年代から2010年半ばまで活躍したハードコアバンド、エモバンドを中心としたメンバーにより結成された、ポストハードコア・インディーロックバンドの2023年リリースの3rdアルバム。Run For Cover Recordsより。百戦錬磨の5人のグルーヴから生み出される、“ハードコア通過後“としか形容できない独特のうねり。エネルギッシュでありつつ彼らの過ごしてきた時間も確かに感じさせる哀愁。革新的目新しさに溢れているサウンドではないはずなのに何故こんなに瑞々しく、またエモーショナルに響くのでしょうか。前作からの完全な延長線上でありつつ、より渋い方向へ向かった気がします。このバンドの心臓と言えるドラムShawnの入魂のスネアとフロアタムさばきに燃え上がり、深みのサッドギターに胸を締め付けられ、ボーカルPatの無骨ながらもメロディアスに歌い上げるパートに涙腺を刺激されます。Dischordのバンドを想起させるようなサウンドではありますが、Fiddleheadは根底にあるセンスがモダンなバンドで、現行のインディロックとも親和性が高いです。なのでRun For Coverからリリースしてきているのも凄く納得できます。もちろんハードコアへのリスペクトと愛は今なお深く、Angel Du$t、Trapped Under IceボーカルのJusticeを迎えた"True Hardcore(Ⅱ)"で、自分達のハードコアの意味と思いを歌っています。現代におけるエモとポストハードコアの形を追求する洗練された作品。
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Fiddlehead / Death Is Nothing To Us (CD)
¥2,200
※こちらは海外盤になります。 Have Heart、Verse、Basement等の2000年代から2010年半ばまで活躍したハードコアバンド、エモバンドを中心としたメンバーにより結成された、ポストハードコア・インディーロックバンドの2023年リリースの3rdアルバム。Run For Cover Recordsより。百戦錬磨の5人のグルーヴから生み出される、“ハードコア通過後“としか形容できない独特のうねり。エネルギッシュでありつつ彼らの過ごしてきた時間も確かに感じさせる哀愁。革新的目新しさに溢れているサウンドではないはずなのに何故こんなに瑞々しく、またエモーショナルに響くのでしょうか。前作からの完全な延長線上でありつつ、より渋い方向へ向かった気がします。このバンドの心臓と言えるドラムShawnの入魂のスネアとフロアタムさばきに燃え上がり、深みのサッドギターに胸を締め付けられ、ボーカルPatの無骨ながらもメロディアスに歌い上げるパートに涙腺を刺激されます。Dischordのバンドを想起させるようなサウンドではありますが、Fiddleheadは根底にあるセンスがモダンなバンドで、現行のインディロックとも親和性が高いです。なのでRun For Coverからリリースしてきているのも凄く納得できます。もちろんハードコアへのリスペクトと愛は今なお深く、Angel Du$t、Trapped Under IceボーカルのJusticeを迎えた"True Hardcore(Ⅱ)"で、自分達のハードコアの意味と思いを歌っています。現代におけるエモとポストハードコアの形を追求する洗練された作品。
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Militarie Gun / Life Under the Gun (LP)
¥4,000
SOLD OUT
Drug ChurchやRegional Justice Centerのメンバーにより結成されたLAのオルタナティヴバンドの2023年リリースの1stアルバム。リリースはLoma Vistaより。全体的に音数はシンプルになりつつも弱々しい印象は全く無い、洗練されたパワフルさと、何よりキャッチーさとポップネスが楽曲全面に出た、確実にこれまでから一つ先へ進化したサウンドとなっています。過去3作のEPで見せていた荒々しいポストハードコアからオルタナティヴ化していく流れを踏まえつつ、The Stone Rosesをどこか彷彿とするような清涼感のあるアプローチを上手く取り入れていたり、より奥深いバックグラウンドで磨き上げられています。ハードコアやパンクを通過してきたものにしか無い、なんとも言えないザラザラ感に刺激されつつ、やっていることは現行のUSメジャーのギターロック、オルタナティヴロック。これがめちゃくちゃ腑に落ちる塩梅で完成されています。これは個人的に現代においてのRival Schoolsなんじゃ無いかなと勝手に思っています。ハードコアを下地としながらもより多様でオーバーグラウンド化を恐れないアグレッシヴな姿勢は現行のTurnstyle、One Step Closerにも通じるところがあります。UKでいうとHigh Visがやっていることであり、このハードコアのオルタナ化の流れはめちゃくちゃ面白いと思います。現代のUSにおいてのエモの一つの形なのかも。
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CORIKY / st (LP)
¥2,600
Ian MacKaye (Minor Threat、Fugazi、The Evens)、 Amy Farina (The Warmers、The Evens)、Joe Lally (Fugazi、The Messthetics)というDischordの歴史そのものと言えるような3人が結成したD.Cのポストハードコアバンドの2020年にリリースした1stアルバム。Joe Lallyのベースが作り出す柔らかな不穏さとでも言うような薄くゆらゆらと漂う緊張感、Ianが影響を公言しているJimi HendrixやTed Nugentといったアーティストのネットリと張り付くようなブルースの質感、後期fugaziにあったようなムーディな不協和音、時折現れるThe Evensのような耳馴染みの良いメロディと、全てが繋がってしまう唯一無二のサウンド。ハードコア、ポストハードコア、彼らの様々な「これまで」を経てきたから今だからこそ到達できたスタイルだと思います。音数が減り空いた空間から染み出してくる練り上げられた乾いたエネルギーは円熟味、哀愁という言葉がピッタリながらも未だアイデアは尽きない、驚きと新しい発見のある一枚。
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Q and Not U / Different Damage (LP)
¥2,700
D.Cのポストハードコアバンドが2002年にDischordよりリリースした2ndアルバム。プロデューサーにIan MacKayeとDon Zientaraを迎えInner Ear Recordsにて制作された。前作よりMatthew Borlikの脱退からトリオ編成になった今作。ドラムJohn Davisの複雑かつ軽快なリズムを土台とし、シンプルで彩り豊かなメロディが絡み合うことで生まれた異質なポップネス。前作では2本のギターの重なりで作られるカタルシスがありましたが、今作はギターが一本になり、その代わりに生まれた余白でクリアで繊細で、時に力強いアンサンブルが作り出されており、各楽器の音の広がりが増したものになっています。Dischordのポストハードコアの部分は残しながらもより多様なアイデアとアプローチがリズムでもフレーズでも曲構成でも随所に光っており今尚驚かされます。ダンサブルで実験的、ポストパンク、R&B、シカゴ音響派などを飲み込んだように思わせる、Dischordの中でも異質なサウンド。それはリズミカルという方向に振り切ったfugaziの別の未来であったようにも感じさせられます。
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SUNDAY'S BEST / WHERE YOU ARE NOW (LP)
¥3,400
SOLD OUT
カリフォルニア・ロサンゼルスのエモバンドが1998年にCRANK!からCDでリリースしていた7曲入りEPをドイツThirty Something Recordsが2023年にレコードでリイシュー。流れ出る一つ一つのメロディがどこまでも甘く悲しいエモ。ゆったりとしたアルペジオが紡ぎ出すムーディでメランコリックな楽曲はエモというジャンルの中でも唯一無二なスタイルを作り上げていると思います。後にPolyvinylから出るアルバムはポップネスに振り切ったエモを聴かせてくれるのですが、この時期は良い意味で未完成でピッタリと詰まっていない余白の部分がエモの醍醐味に溢れたものになっています。CRANK!ということでChristie Front DriveとBoys Lifeのスプリットぽさもありつつも、そこはもう少しオーバーグラウンド寄りのサウンド。この優しいポップネスは彼らの絶対的な魅力であり、Death Cab For Cutieみたいな形になる未来もあったのかなと想像させるものが既に今作の根底に流れているのを感じる内容になっています。
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SUNDAY´S BEST / THE CALIFORNIAN (LP)
¥3,200
カリフォルニア・ロサンゼルスのエモバンドが2002年にPolyvinyl RecordよりCDでリリースしていた2ndアルバムをドイツThirty Something Recordsが2019年にレコードでリイシュー。成熟したエモのその先を垣間見せてくれるサウンド。1stアルバムで確立したポップでキャッチーなエモを更に洗練し、押し進めた内容になっています。派手な展開やフレーズは削ぎ落とし、やや落ち着きを見せつつもそこから溢れ出てくるメロディは彼らのポップセンスに裏打ちされた珠玉の数々。エモからよりインディーロックやギターポップに近づいたサウンドとなっており、より純粋に良いメロディが際立っているように感じます。オーバーグランド的サウンドへの接近は2000年代前半のエモバンドの全体の流れとしてあったように思えますが、その中でも群を抜いて垢抜けているというか洒落ているなと思います。この柔らかなムーディな雰囲気は唯一無二です。90'sのその後という意味でもThe Jealous SoundやLast Days of Aprilなどにも親和性を感じます。エモが元々の文脈から逸脱していく過程で産み落とされた名作と言えるのではないでしょうか。
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onsloow / st (LP)
¥2,500
SOLD OUT
ノルウェー・トロンハイムのインディロックバンドが2022年にリリースした1stアルバム。Friend Club Records、Annie Records、Slow Down Records、Rufen Publishingsによる共同リリース。90'sのオルタナティブロック、ギターポップ、パンク、エモをはじめとするノスタルジーの残像を全てを飲み込みながら20'sの現在フレッシュに鳴らされるパワーポップサウンド。キラキラとした眩しさが音から伝わってくるようなキャッチーなメロディは甘く、どこか切なく聴こえます。シンプルかつ骨太でパワフルな演奏はThe Bethsやweezerあたりの割とハイプなバンド達が想起させられると同時にモダンパワーポップ化したSargeだなとも思ったりしました。ちなみに今作のマスタリングはOrchidやAmpereのWill Killingsworthがやっているようです。とびきりのキャッチーさと儚さが入り混じる全8曲。
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dimber / Always Up to You (LP)
¥2,700
SOLD OUT
ロサンゼルスのパンクバンドが2022年にDead Broke Rekerdsよりリリースした1stアルバム。きらきらと眩しいようなポップなメロディからポジティブなエネルギーが流れ込んでくるガレージパンク。カラッとしたラフさと泥臭さを感じる楽曲はサウンドにアメリカの広大さと空気感を内包したようなサウンドでFuture VirginsやBasement Benderなどのチャタヌーガパンクとも繋がっているような印象です。音源の質感を含めての人間が演奏しているものを聴かされているという温度を感じられる音楽はやはり良いものです。フレッシュでありつつもどこかノスタルジーが漂う雰囲気は90年代後半に一瞬タイムスリップするような懐かしさ。FastbacksやThe Muffsなどの現在「洋楽」という括りで語られるようなバンドにあるバラエティ豊かなポップネスも感じさせます。アルバムを締め括る"Better Off Alone"のポップなメロディが優しくも力強く背中を押してくれる。ダウンビートな人たちのためのアップビートな音楽。 https://dimber.bandcamp.com/album/always-up-2-u
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Karate / st (LP)
¥3,200
1993年結成のマサチューセッツ・ボストンのロック・ポストハードコアバンドが1995年にリリースした1stアルバムをNumero Groupがリイシュー。少ない音数と気怠げなリズム、淡白なボーカルとその間で変幻自在にうねるベース。終始得体の知れない緊張感が漂う彼らにしか作れなかった不穏でサッドなグルーヴはドラマチックな展開も大げさな叫びもいらないと気付かされる極上の寂寥感。Dischordの音響派に流れていくHoover周辺のバンドやUnwoundなどのポストハードコアの影響が色濃く出ており、そこにDusterなどのスロウコアの要素とジャズからの影響という部分でより捉え所のない音楽性になっています。曲の中にある余白の使い方が彼らは素晴らしくて90年代半ばのパンクやハードコア、またはグランジの爆音での攻撃性に対してスローなリズムと静寂を用いて対抗していたのかなと勝手に思っています。曲は長くて良いし、共感したいだけのメロディもいらない。今こそ彼らの魅力に再度耳を傾けるべきな静かなエネルギー渦巻く作品。
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Bitpart / Beyond What's Left (LP)
¥2,700
SOLD OUT
フランス・パリのメロディックバンドが2016年にリリースした2ndアルバム。U.SグッドメロディックレーベルRumbletowne Recordsとフランスのパンク・ハードコアレーベルDESTRUCTURE RECORDSよりリリース。 ザラついた荒々しさの中から生まれてくるグッドメロディがパワフルに響くメロディックパンク。前作までのメロディックとガレージ+ポップパンク的なサウンドからおそらく彼らが深く影響を受けているであろう80's〜90'sのハードコアやポストハードコアの要素が今作は大きくなっています。特に"Real And Close,Out Of Mind"などの曲は今作の後の3rdアルバムで見せるDischordライクなポストハードコアサウンドの片鱗が散りばめられています。スタイルの違うJulieとEricの2人が代わる代わるボーカルをとる男女混成のスタイルはキャッチーなフレッシュさから拳を握ってしまう熱さまで感じさせてくれる良いとこどり。MuffsからRVIVR、JAWBOX好きまで是非聴いて欲しい内容です。
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Last Days Of April / Ascend To The Stars (LP)
¥3,200
スウェーデン・ストックホルムのインディーエモバンドが2002年にBad Taste Records よりリリースした4thアルバムをLa Agonía De Vivir が2019年にリイシュー。2nd以降インディーロックの要素を色濃くしてきた彼らのサウンドですが今作も多彩なアプローチとクオリティで彼らのミュージシャンシップを遺憾なく発揮している内容です。純粋な「エモ」としての音楽性は無くなったように思えますがエモをバックグラウンドとして珠玉のメロディは健在で、やはり切なく美しい。音がよりシンプルになり、よりくっきりと浮き出てきた滑らかなメロディはこれまでのどの作品よりも優しく包み込んでくれるようなロマンチックな内容になっています。
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Engines / Every Cell (12")
¥2,500
シカゴのインディロック/エモバンドが2019年にリリースした6曲入り12インチEP。Middle-Man Records、Forge Again Records、Killer Tofu Records など5レーベル共同リリース。盤色はイエロー。美しいアルペジオと時にメロディアスでアグレッシブなバンドアンサンブル、そして伸びやかで透き通るようなボーカルがエモーショナルに響くエモ。質感としてはSamuelやBeta Minuse Mechanicなどのややメロディアスかつロックの要素が入り込んできたエモに近いと思いますがボーカルのEmilyの歌唱力と力強さが一歩上のステージに押し上げているように感じます。軽快さと壮大さ、染み込んだ悲しいメロディが心を打ちます。ちなみにメンバーにStillwellのJustinがギターで参加しているみたいで驚きました。エモとロックの狭間という感じですが過去からの文脈が確かにあって信頼できる内容になっています。
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WETNAP / gnarled (LP)
¥2,860
SOLD OUT
2018年結成の東京の3ピースメロディックバンドが2022年にDEBAUCH MOODよりリリースした1stアルバム。針を落とすとひたすらにうるさく悲しい、どこを切り取っても胸をえぐられる。間違いなく待ち望んでいたグッドミュージックです。圧倒的熱量を持って極限まで削り、無骨に形作られた楽曲と決して媚びない美しいメロディは私たちのものであると確信させられます。メロディックともレボリューションサマー影響下のポストハードコアとも形容できる、そしてどちらでもないハードコア、メロディック、エモ、オルタナと全てが地続きだったあの頃の危うく得体の知れない空気感が瑞々しく再び現在につくられています。Dinosaur Jr.の"You're Living All Over Me"やJAWBREAKERの“Bivouac"などにある、ジャンルを形容できるようでできない「何か」を強く感じつつ、One Last WishやRites of SpringなどのDischord群、その他80'sから90's問わず全米各地の地下で蠢いていたSquirrel BaitやNew Sweet Breathといったメロディックパンクなど、誰しもが自分のフェイバリットに思いを馳せてしまう多様なバックグラウンドがより彼らの形容し難い音楽性に拍車をかけているように思います。ハードコアからエモやメロディックへ試行錯誤しながら変遷していった過渡期をリアルタイムで聴かせられているような感覚は唯一無二。また、今作は全曲一発録りでライブで放出されるマグマのようなパッションと冷たい緊張感がそもまま詰め込まれており、どこまでもリアルで生々しいです。アルバム名である“gnarled“は節くれだった、ゴツゴツしたというような意味があるようで、今作の楽曲はザラつき曲がりくねった美学が体現された、2022年のパンクアルバムだと思います。
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Natalie Evans / Movements (LP)
¥3,630
SOLD OUT
※盤色:ダークレッド ロンドンのSSWが2022年にリリースしたアルバム。Small Pondからのリリース。淡々と、だが深い優しさを持って奏でられていく音の一つ一つがとても眩しい作品。アコースティックギター、ハープ、ピアノを主体に奏でられる楽曲とNatalieの甘くどこか切なさがあるボーカルは親しみ深くもあり、幻想的でもあります。日々の生活とどこか遠く離れた場所へのノスタルジー。彼女の心象風景、世界とのつながりのようなものを淡く鮮やかに表現しているなと思います。各楽器のメロディや歌は前作からよりシンプルになっており、削ぎ落とされた分、単純な歌唱方法とは違う力強さや説得力のようなものを随所に感じられます。多くの人がそうであるように自分も2017年のyou could be a copへのボーカルで彼女のことを知りました。その音楽性をエモの文脈で捉えていましたが、今作での表現はエモの枠組みから外れた、進化という言葉では稚拙ですがどこか吹っ切れた清々しさを感じます。Snail MailやJulien Bakerといったパンクやエモなどの音楽にルーツを持つSSWアーティストがそうであるように、彼女もそれまでと一段階表現の質を変えたターニングポイントになる作品となるのではないでしょうか。日本盤CD同様こちらにも日本語対訳がついていますのでより細部まで彼女の音楽の世界観を体感できると思います。
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RIKI / HOT CITY (12")
¥2,000
LAを拠点とするシンセサイザー奏者、R. Ladyzhynskyによるシンセポップ・プロジェクト。2018年にSymphony of Destructionからリリースされた3曲入り1st EP。一音目のシンセサイザーのメロディから非日常な空間へ連れていかれる異次元の扉を開くサウンド。ポストパンクの冷たさはありつつもムーディでディスコを思わせるポップさもあります。ドライブ感とストイックさを感じさせるリズムは甘くロマンチックであり私たちを本能のままダンスさせてくれる魅力に溢れた内容。
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